【題未定】の感想(文体について)[読書の秋]
私は安部公房作品のファンです。
安部公房の「題未定」という文庫本を少しずつ読んでいます。
以前、NHKラジオでアナウンサーの朗読を聞いた「白い蛾」*は、読み終えました。今は「(霊媒の話より)題未定」という短編小説を読んでいる途中です。
以下、ここまで読んだ感想です。
•文体が古い:
安部公房の文章は読みやすいと私は思っています。特に、後期の作品ほど平易な文字を使って易しい言葉で書かれていて読みやすい印象です。難しい内容のことが書かれていても(理解できたかは別として)すらすらと読み進められます。
一方、「(霊媒の話より)題未定」は私が知っている安部公房作品の文体とは異なっています。現代では平仮名で表記するような言葉も漢字で表記されていますし、読点(、)の使い方や、その他約物(記号のこと*)の使い方も現代の小説には見られないような独特な感じがします。
•なぜか読みやすい:
それでもなぜか、読みやすいのです。それは「安部公房作品だから」という先入観のためかもしれませんが、私には読みやすく感じられました。
•文体の参考になる:
現代の文章は現代人にとって平易化が進んでいます。難しい漢字は平仮名で表記し、文の論理関係を明確にするため、また、単語を区切って読みやすくするために読点を積極的に利用するのが、現代 一般に推奨されている日本語の文章のスタイルです。しかし、平仮名が多用されているために、かえって読みにくくなることもあるかもしれません。
(例:「かえって読みにくくなることもあるかもしれません」は平仮名が連続していて読みづらい。漢字を用いて「却って読み難く成る事も有るかも知れません」と書くこともできる。)
また、読点も使う箇所を選んで最小限の使用にとどめなければ、読点が多すぎて読みにくいという事にもなり得ます。
「(霊媒の話より)題未定」は漢字が多用されており、読点の付け方は現代文とはちょっと違う感じですが、それでも読みやすいので、漢字と読点の使い方の参考になります。
•まとめ:
文体は古いですが、読みやすい本です。私はまだ「白い蛾」と「(霊媒の話より)題未定」しか読んでいないので、他の作品を読んだらまた違う感想を持つかもしれませんが、最初期の安部公房作品であるこの本にも、安部公房作品に共通している「読みやすさ」というものが現れているように思います。