安部公房の、夢に関する短い話を集めた書籍、「笑う月」をご紹介します。
私は安部公房作品のファンですが、最初に安部公房の作品を知ったのは、高校の国語の教科書に載っていた「鞄」でした。奇妙な話だったので、当時「高校の教科書にもこんな変な話が載るのだな」と思ったものです。
本の裏側には『「夢」のスナップショット全17編。』と書かれています。
本の裏側に書かれているとおり、この本に書かれている話の大半は、夢(寝ているときに見る夢)について言及されています。しかし、この本に収録されている作品の中には、夢に直接言及されていない話もあります。たとえば「鞄」は短い小説であり、作品中に夢は出てきません。おそらく「鞄」は、作者の安部公房が見た夢からヒントを得て書かれた作品なのだろうと思います。
「笑う月」に収録されている話の中で私が特に好きなのは、「鞄」、「蓄音機」、「ワラゲン考」です。 他にも「案内人」や「自己犠牲」、「公然の秘密」などは、安部公房の長編にも通じるような、安部公房ワールドの雰囲気が感じられて、好きです。
「笑う月」に収録されている作品は短くて読みやすいので、安部公房は知っているけど難しそうで読んでいないという人にもおすすめです。言い方を変えれば、「笑う月」の中に面白い話がなかった、という人は、安部公房作品には合わない人、とも言えると思います。
「笑う月」には収録されていませんが、「第四間氷期」は、高校生にお勧めしたい作品です。安部公房という作家のすごさが分かる作品だと思います。
万人にはお勧めできない作品もある:
安部公房の作品は、大抵は誰にでもお勧めできるのですが、長編の「密会」だけは、私は好きですが、他者にはお勧めしていません。理由は、読んでみれば分かると思います…。「笑う月」にも「密会」という名前の短い作品が収録されていますが、これは長編の「密会」の基となった話だと思われます。
安部公房を知らない人、または、読んだことはないけど興味はあるという人には、「笑う月」をおすすめします。1つの話が短くてすぐ読めるので、おすすすめです。
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