メモ:「~のように・・・でない」という文章表現について
「~のように・・・でない。」という文章は、複数の意味に解釈できるため、誤解を招きやすい表現だといわれています。したがって、この表現を実用文で使うのは避けるべきでしょう。しかし、複数の意味に解釈できるというのがどうもよく分からなかったので、整理してみました。
• 誤解を招きやすいフレーズ
「~のように・・・でない。」という文章は、3通りの意味に解釈でき、誤解を招きやすいので実用文において使うべきでないと、「日本語スタイルガイド 第3版」(一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会)に書かれています。どういうことなのか、自分なりに整理してみました。
例:
自動車Aと自動車Bについて、「AはBのように速くない。」という例文があるとします。このとき、以下の3通りに解釈できるといいます。
①AもBも遅い。
②Aは、速いが、Bより遅い。
③Aは遅い。Bは速い。
以下、上記の例文について整理してみます。
前提
「AはBのように速くない。」という例文において、「Bのように」はおまけ的なものなので、外しても文の主な意味は通じるはずです。「Bのように」を外すと、例文は次のようになります。
Aは速くない(=遅い)。
以降、「速くない」は「遅い」に読み替えます。
ここで、Aがどの程度遅いのかが問題となります。「Bのように」がそのヒントになると思います。
例文を別の表現に書き換えてみる
「Bのように」は以下の2通りの解釈が可能です。
•Bと同様に
•Bと比較して
上記の解釈を当てはめて、例文を次のように書き換えます
(a) Aは、Bと同様に、遅い。
(b) Aは、Bと比較して、遅い。
ここで、早い・遅いとは、どういうことでしょうか。AとBは自動車なので、速く走ることができる自動車が速いということになります。時速100㎞の自動車は、時速40㎞の自動車よりも速いということです。ここでは、時速100kmを「速い」の基準とします。
(a)と(b)のイメージを以下に示します。
(a)の場合は、AもBも遅いので、両方とも基準(時速100㎞)未満なのでしょう。これが、「①AもBも遅い。」に対応します。
(b)の場合は、AがBよりも遅いことは分かりますが、基準に対してどれくらい遅いのか不明です。Aが基準に達している場合(b-1)と、達していない場合(b-2)に分けて考えます。
(b-1)が「②Aは速いが、Bより遅い。」に対応します。(b-2)が「③Aは遅い。Bは速い。」に対応します。
• 2通りの意味
複数の解釈ができるのは、「~のように」という言葉が、「~と同様に」という意味にも「~と比較して」という意味にも読めてしまうことに由来していると思います。この2通りの解釈ができてしまう点が問題です。「~のように・・・でない。」という表現は厳密には3通りの解釈ができますが、日常生活ではそこまで厳密に区別する必要はなくて、2通りの意味の区別ができれば十分だと思います。
• まとめ
「~のように・・・でない。」という文章表現の複数の解釈について、図で整理してみました。仕事などで使う実用文においては、「~のように・・・でない。」という文章表現は、複数の意味に解釈できる、”誤解を招きやすい文章”なので、注意が必要です。「~のように・・・でない。」という文章は、別の表現を使って書き換えることを検討しましょう。
(この記事は、2022年7月に執筆し、2024年9月に修正・公開したものです。)