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カテゴリー : 雑記 - 回想
•ねるねるねるね •回想


公開日:

ねるねの手記


Contents
• 2010~2011年頃の話
• 後記

これは私が、大学生か大学院生だった時の、冬の話である。

私は、TOEICを受けるために、ある私立大学へ向かって歩いていた。その大学はTOEICの会場だった。

試験会場に向かう途中、私は路上に張っていた氷にすべって、転んだ。コンクリートの地面に手をついて、けがはなかった。しかし、どういうわけか、左手の手首にはめていた腕時計のメタルバンドが、転んだ衝撃で壊れてしまった。たぶん、金具が手を傷つけないように、無理な力がかかる前に壊れる構造になっていたのだろう。その腕時計はCASIO製で、就活のために買ったものだった。たしか2000円ほどの安価な腕時計だったが、青い文字盤には高級感があった。私は当時、腕時計をする習慣はなかった。やはりあれは、就活を意識していた冬だった。

さて、試験が終了し、試験会場の最寄り駅の周辺を歩いた。見慣れない土地だった。スーパーマーケットがあったので立ち寄ってみた。

私はお菓子売り場に立ち寄って、ねるねるねるねを買った。

会計の時、レジ担当の若い女性が、ちょっと笑ったような気がした。

ねるねるねるねは、1990年代にテレビで放送していた、魔女のCMが有名だ。ねるねるねるねのターゲット層は子供だろう。しかし私は、ろくにねるねるねるねを食べたことがないまま、大人になってしまっていた。

なぜあの時、ねるねるねるねを買ったのか、その正確な理由を今では思い出すことはできない。まあ、たぶん、取り戻せない青春への代償行為だったのだろう。

買ったねるねるねるねは、大学の研究室に持ち込んだ。そして、わざとSくん(研究室の同期)から見える位置で、私はねるねるねるねを作って、食べてやった。しかし、後で反省したことだが、他人の前でいい大人がねるねるねるねをわざわざ作って食べるという行為は、いささか大人げない、芝居がかった行為であった。

私は、ねるねるねるねはふわふわしたクリーム、またはムースのようなものだと想像していたが、実際に食べたねるねるねるねは、ラムネの錠剤をそのまま噛み砕いているような食感で、想像と違ったので、ちょっと残念だった。

それでも、あの時勇気を出してねるねるねるねを買ったからこそ、こうして私は今、ねるねるねるねの食感を、思い出として述べることができる。だから、あの経験は無駄ではなかったと思う。


Sくんから見える位置でねるねるねるねを食べたと書いたが、それは私が無意識に作り上げた、嘘の記憶かもしれない。思えば、私がねるねるねるねを食べたとき、研究室には誰もいなかったような気もする。